もう1ヶ月くらいになるんかな。
やっと心の整理というか、気持ちをリセットできました。
その日は父の最後の兄弟の葬儀で朝から飛び回っていた。8人兄弟の中でも一人だけお人好しで、少しだけ色々と周りと劣る父がどれほど親戚から冷遇され、否定的な対応をされてきたのか、ガキの頃からずっと見てきたので、正直どの兄弟に関しても俺は情が沸かない。
しかし、毎度父に頭を下げられ、段取りやら何やらを全部させていただいてる。今回も親戚はウチ以外どなたも来ない。家族や兄弟の在り方は其々だろうが、いつも嫌な気持ちになる。
少し昔話。
俺が起業して父母を養わせていただく様になり、少しずつ父が裕福になっていく際、叔父達は何度も金を父にタカリに来る様になった。祖父が亡くなった際も父には一切の相続などはいただけなかった。「それでいい、別に要らない、お前がおりゃいい」そういう問題じゃないだろ?めんどくさい事は全部父に押し付けられてるのに、自分の父の死ですら、一切の還元もないなんて。
俺はガキの頃から大人になった今もずっと家系を憎んでいる。クソほど貧しい幼少期は他人どころか身内にも憎悪を抱いて、ずっと過ごしていた。
叔父が火葬される際、父が言った。
「ワシは一人じゃないけど、兄弟は全部逝ってしまった。ワシが頭良けりゃ、もっとしてやれる事があったんかも知れん。」
涙を流す父の横で俺は辛辣だった。
「父ちゃんが自分を責めるのはどう考えてもおかしいだろ?ガキの頃はいつも皆の前で◯◯(父の名)はバカだで息子も嫁さんも大変だよなぁ、って笑ってた連中だぞ?金も騙しとられてるし、母が倒れ、親戚を集めてくれ言われた際も、誰一人来なかった様な奴らじゃねぇか、お人好しもそこまで来るとこっちが腹立つわ、大概にしてくれよ。」
「お前には苦労ばっかさせた。兄弟も作ってやれなかったし、何も買ってやれんかったし、子供の時は散々だったよな。今日だって来たくないのも知っとる。でも、俺はお前しかいないんだわ。兄弟も碌でもない人だったかもしれん、でも父ちゃんは母ちゃんと出会えて、お前を授かってから、ずっと家族には感謝しとんだわ。こんな俺にも可愛い子供(俺の事)を授かり、貧乏でも機転の効く嫁と毎日同じ屋根で寝れとっただけで父ちゃんは感謝しとんだわ。俺はバカだで上手く行くことなんてなくて、毎日しょぼくれてても家に帰ればお前らがいて幸せだった。俺だけこんな幸せなのに、兄弟はいつも争いばかりでずっと辛かったんだわ。お前には本当に嫌な思いさせたと知っとる。それでもお前しか父ちゃんは頼れんかった。許してな。もうあと少しか生きれんとしても、父ちゃんは後悔したくない思って、やってきた。後悔したくない言いながら、父ちゃんは何もできんもんで、お前には無理ばっか言っとった。でもお前は父ちゃんに似てるから、いつも嫌な顔しながらでも、ずっと手伝ってくれたな、父ちゃんと母さんの子だでな。」
本当に珍しく父が雄弁に語ったんだよな。
父が不器用ながら俺を大切にしてくれていた事は、大人になってから色々と気付き、今では誰よりも両親を大切にしてる自負もある。子供ができてから、俺も近い周りに優しくできる様になった実感もある。いつもムカつくけど、父の願いを聞いてしまうのは、やはり俺もこのバカほどお人好しの父が大好きで、心から尊敬してるんだと思う。
でも、俺は父の様にはなれない。
しかし、改めて周りの人にもっと感謝し、自分の子供達にありったけの愛情で、また手の届く範囲でいいから、もっと大切にしていこうと思った。
「父ちゃんと母さんの子だでな」
自慢の息子として、悔いなく父と母を見送れる時が、その時が来るまで。なんつって、なんつって。